アメリカの大統領の再選と、日本の首相の四選―日米の国の長どうしが互いに仲がよいという表面的な幻想

 アメリカのドナルド・トランプ大統領が大統領に再選されたら、日本のいまの首相が続投するのがふさわしい。いま首相は党の総裁として三選目に当たるが、四選もありだというのだ。与党である自由民主党の議員はそうした見かたを示す。

 この見かたでは、アメリカのトランプ大統領と日本のいまの首相が互いに仲がとてもよくて、外交でアメリカと日本がうまくことを運べているということが前提条件としてとられている。アメリカとの外交において、いまの首相は能力がとても高い。この前提条件は、現実としてはまちがったものなのではないだろうか。

 いまの首相は、アメリカとの外交において、とくに高い能力を持っているわけではない。アメリカの言いなりにさせられかねない。大に事(つか)える事大(じだい)主義のようになってしまっている。アメリカから日本にとって不利な条件をのまされる。日本にとって不利な条件となっているのを改めることができないでそのままになる。そうしたことが危ぶまれる。

 アメリカの大統領と日本のいまの首相が互いに仲がよいといったような、へんな幻想に頼るのではなくて、現実をしっかりと見つめるようにして、現実に根ざしたことをやるようにすることがいるのではないだろうか。

 与党である自民党では、へんなあり方が取られているように受けとれるのがある。そのへんなあり方というのは、アメリカの大統領にどれだけ近づくことができるのかが価値とされている点だ。アメリカの大統領と近づくことができればそれに価値があるといったようなへんなあり方になっている。

 自民党の中では、このへんなあり方がとられていて、日本の国の目線というよりは、アメリカの国の目線みたいなふうになっている。アメリカの国の目線から日本を見ている。よって、アメリカに有利になって、日本に不利になるというふうになって、それが改めることができづらい。

 アメリカは日本のことを誤解しているところがあるが、その誤解が正されないままに、あたかもそれが正しいことであるかのように、日本では受けとられていることで、日本の国益が損なわれている。

 その誤解というのは、アメリカが一方的に日本に利益を与えてやっているというのがあげられる。アメリカがそう誤解しているとしても、じっさいにはそうとは言えず、日本がアメリカにたいして利益を与えているのが少なくない。その利益というのは、アメリカの軍にたいする基地の提供や、思いやり予算などである。

 基地の提供では、日米地位協定の不平等のおかしさが言われているし、日本の首都である東京都の中に基地が置かれているというおかしさがある。アメリカが不当に日本で幅を利かせているととらえられるのがある。

 日本はアメリカから一方的に利益を与えてもらっている。恩を受けている。その恩を返さないとならない。この見かたはどちらかというと日本ではなくてアメリカの国からの目線ではないだろうか。この見かたを自民党はとっているように見うけられる。この見かたをとるのではなくて、日本が自分たちで自国からの目線で見るようにして、アメリカが利益を得ていて、日本が損を受けているという、その不当さや不平等さをとり上げるようにしたらどうだろう。

 アメリカと日本とのあいだで、日本が不当に不利を受けていたり、または日本の国内で、一部の地域(沖縄県など)が不当に不利を受けていたりする。それをそのままにするのではなくて、改めるようにして行く。それをしないで、へんな形でアメリカからの目線をそのまま受け入れてよしとしているのが、自民党のやっていることだと言ったら、まちがったことを言っていることになってしまうだろうか。

 同じ階層差つまり不平等(非対等)の問題を改めるのでも、それは有利になっているのが何かや、不利になっているのが何かというのを、正しくとらえたうえでのことでなければならない。それが正しくなくておかしくなっていれば、よけいに階層差が大きくなって、不平等が増すばかりだ。アメリカは日本にたいして、アメリカが有利で日本が不利になるように持って行こうとしている。それはそのはずで、そうしたほうがアメリカの国益にかなうからだ。そしてそれにそのままついて行って行こうとしているのがいまの自民党であり、いまの首相なのではないだろうか。

 アメリカの大統領と日本の首相は互いに仲がよい。これが本当のことだとして、それはそれでよいことといえばよいことだが、それが意味することは、お互いに滑らかな間がらだということだ。協調している。それが現実において意味することとは、その裏にある利害の対立の隠ぺいだ。利害の対立があるのは、渋滞が起きていることだが、渋滞が起きているのを改めないでいて、あたかもそれが無いかのようにしている。滑らかであるかのように見せかけている。そこにいんちきさやうさんくささがある。西成活裕(にしなりかつひろ)氏の渋滞学では、万物は渋滞すると言われている。

 参照文献 『若者は、選挙に行かないせいで、四〇〇〇万円も損してる!? 三五歳くらいまでの政治リテラシー養成講座』森川友義(とものり) 『絶対に知っておくべき日本と日本人の一〇大問題』星浩(ほしひろし) 『社会階層 豊かさの中の不平等』原純輔(じゅんすけ) 盛山(せいやま)和夫 『図解雑学 よくわかる渋滞学』西成活裕 『現代政治理論』川崎修 杉田敦