日本と韓国とのあいだの関係が悪化していることについての、日本の官房長官による認知のゆがみ―個人要因(内)と状況要因(外)

 日本と韓国とのあいだの関係が悪くなっている。このことはひとえに韓国が否定的な動きをいくつも行なったためだ。それが原因なのだという見かたを、自由民主党菅義偉官房長官は示した。

 日本と韓国との関係が悪くなっているのは韓国のせいだということだが、この官房長官による見なし方は、原因の特定からいって問題があるのではないだろうか。日韓の関係が悪くなっていることの原因を韓国に当てはめるのは、韓国に原因を特定しているものである。この原因帰属のさせかたには日本の国による認知のゆがみが働いているととらえられる。

 原因の特定としては、個人要因(内)と状況要因(外)があるが、このうちで個人要因による認知のゆがみが働くことがおきやすい。日本と韓国とのあいだの関係であれば、官房長官のように、韓国が悪いというふうに見なすのは、韓国の内に要因を当てはめてこと足れりとするものだ。この見なし方には認知のゆがみが働いているおそれが小さくないし、限定された見なし方だということが言える。

 認知のゆがみが働きがちな、個人要因である、韓国の内に要因を当てはめてこと足れりとするのではなくて、韓国をとり巻く外の状況にもっと目を向けないとならない。それをすることによって、認知のゆがみが働くのを和らげることに役に立つ。

 官房長官をはじめとして、ほんらいは自由主義の公器であるべきテレビやラジオは、のきなみ韓国にたいしてその内に要因を当てはめて終わりにしてしまっているように見うけられる。さまざまな視点からの色々な議論のやり取りが行なわれることがいるのが自由主義の公器であるが、そうであるべきところを、その役割を捨ててしまって、報道機関は韓国を叩くことで報道を終わりにしている。

 日本と韓国とのあいだの関係が悪くなっているのだとして、もしほんとうに官房長官が言うように、韓国の動きにだけその原因があるのだとすれば、韓国が動きを改めさえすればすべてのものごとが改善するはずだ。ところがじっさいの現実はそうではないのではないだろうか。さまざまな要因が複雑にからみ合っているという現実のもつ複雑さを見なければならないし、日本には何ら悪いところはないという仮説を絶対化することはできそうにない。その仮説は反証(否定)することができる。

 参照文献 『クリティカル進化(シンカー)論』道田泰司 宮元博章 『勇気凛凛ルリの色』浅田次郎