ほかの野党と比べれば、自民党による政権はまだましだ、ということへの疑い―政治権力の虚偽意識による主体への呼びかけ

 いまの政権与党は最良ではない。もっともよいとは言えないが、いまの野党が政権をとることとひき比べれば、いまの自由民主党を主とした政権与党のほうがまだましだ。比較による話としてはそう言える。元政治家はツイッターのツイートでそう言っていた。

 元政治家は、自民党による政権与党はけっして最良とは言えないのだとしても、それでも野党が政権をとることとひき比べれば、まだ自民党はましだと言っている。この見なし方は、政治権力の虚偽意識による呼びかけに応じてしまっていることによるのではないだろうか。政治権力からの呼びかけに応じることによって、政治権力にとって都合のよい従順な主体となる。

 いまの自民党による政権によって、それなりにましな社会になっているのかというと、そうとは言い切れないのではないだろうか。社会の全体がましだというのは言えそうにない。社会の全体がどうかと言うと大きな物語になる。全体は虚偽(不真実)であるということが言える。これは哲学者のテオドール・アドルノによる。

 いまの社会には、ましではないところが色々とあるのは無視できそうにない。その社会の中に色々とあるましではないところをいくつもとり上げて行けば、自民党による政権がまだましだというそのましだのところが、どんどん削られて行くことになるだろう。ましだというのと、ましではないというのとが、分断されてしまっている疑いがある。階層化しているのだ。

 野党と比べると、自民党による政権はまだましだ、ということを、疑ってみるのはどうだろうか。この見なし方は、政治権力による虚偽意識の産物だというわけだ。絶対にそうだというのではないとしても、少なくともそう見られるところはあるだろう。

 自民党はまだほかよりもましだとしていたのが、じっさいにはぜんぜんましではなかったというのがわかることは怖いことだ。そういったような無力感と無責任体制に全体がおちいってしまっているように見うけられる。うわべの効力感(有力感)は、じっさいには真の力と言えるものをもっていないのではないだろうか。

 参照文献 『現代思想を読む事典』今村仁司