フェイク情報がむしばむいまの与党(自家中毒)

 フェイク情報がむしばむ日本。トンデモ野党とメディアの非常識。そう題した冊子が、与党である自由民主党の中で配られたという。

 自民党の党本部がこの冊子を配ったという。この冊子について党本部は、報道では語られない真実を伝える内容となっている、と説明している。選挙の演説の資料として活用することをすすめている。

 この冊子についてをテレビ番組がとり上げた。番組が自民党の議員にたずねたところ、この冊子についてだけは触れたくない、とその議員は答えたという。

 フェイク情報が日本をむしばむということだが、もしフェイクではない真実に近い情報をのぞむのであれば、野党とメディアの力はどうしても必要だ。反対勢力(オポジション)となる野党やメディアからの批判を十分に受けとめてこそ、フェイクではない真実に近い情報が何かを探ることにつながる。

 できるだけ正しく考えるためには、権力への批判の視点は欠かすことができそうにない。自民党が配った冊子は、批判を向ける方向が逆なのだ。野党やメディアにたいしてではなくて、政治の権力の中心にむけて批判を向けることがいるのだ。

 野党やメディアにも、まちがいはあるし、フェイクなところはあるだろう。それはあるものの、大まかな方向としては、権力に寄生する冷笑主義(シニシズム)か、それとも権力に批判を向けるキニシズムか、のちがいがある。それを無視することはできづらい。このうちで、キニシズムが重要なのだ。というかシニシズムはよくないのだ。

 フェイク情報は駄目だということで、トンデモ野党やメディアの非常識というふうに冊子では言っているが、この冊子の内容が虚偽意識(イデオロギー)におちいってしまっていてはどうしようもない。報道では語られない真実、という名の虚偽意識におちいってしまってどうするのだろうか。こうしたことにならないためには、反対勢力となる野党や報道機関のはたらきが、十分に活性化されていなければならない。

 参照文献 『正しく考えるために』岩崎武雄 『理性と権力 生産主義的理性批判の試み』今村仁司 『本当にわかる現代思想』岡本裕一朗 『「野党」論 何のためにあるのか』吉田徹