ばかな政策かどうかはともかくとして、いまの首相による政権には創造性があるとは見なしづらく、非創造的である(個人的な意見としては)

 大企業や高所得者に、いま以上の高い税金を課したらどうか。野党の議員は首相にそう言った。そんなことをしたら、日本の経済の全体が悪くなる。景気が悪くなって冷える。ばかな政策だ、と首相は返した。

 はたして、首相が言うように、ばかな政策だということは当たっているのだろうか。大企業や高所得者に、いま以上の高い税金を課さないことで、日本の全体の経済が悪くなるのを避けたとしても、それで十分とは言えないだろう。

 日本の全体の景気が悪くなったり冷えたりするのを避けるとしても、日本の社会のそこかしこで、あちらこちらで、生活に苦しんでいる人はいるのだし、耳をすましたり目をこらしたりすれば、うつろな響きがおきている。

 いまいるのは、日本の全体の経済をよくするとか、景気をよくすることだというよりも、最低限の衣食住をとれるようにしたり、基本の必要(ベーシック・ニーズ)を満たせるようにしたりすることがいるのではないだろうか。

 硬直したあり方を改めるようにして、可塑(かそ)性を持てるようにして、柔軟なあり方になるようにする。そうすることができれば、人々がもっと生きて行きやすくなることにつながることが見こめる。単一の標準というのをみんなに押しつけるのではなくて、色々あってよいというふうにできれば、平準化や画一化の圧力(ピア・プレッシャー)がやわらぐ。

 自己責任ということで、どこまでも貧しくなってしまったり、肩身がせまくなったりするのなら、尊厳を持ちづらい。社会の中で、みんなが平等に尊厳を持てるように、尊厳を公平に分配することがいる。自由主義においてはそれがいるが、それができていないで不公平になっているのが現状だろう。国民が尊厳を持てないのを、自己責任だということで個人のせいにするのは、政治が無責任体制になっていることから来ているととらえられる。

 参照文献 『財政のしくみがわかる本』神野直彦 『理性と権力 生産主義的理性批判の試み』今村仁司 『創造力をみがくヒント』伊藤進