いちど軟化して、それでうまく行かせるというやり方は、なぜロシアと北朝鮮に対してに限られるのだろうか

 北方領土は日本に帰属する。この文言が消えたのだと、外交青書ではなったという。ロシアとの交渉を前に進めるために、軟化の手を用いている。

 それにくわえて、北朝鮮にたいして最大限の圧力を加えるというのもなくして、日本が軟化することによって、拉致問題などを何とかしたい思わくだという。

 日本が軟化するというのは、譲歩することだ。相手から見れば、日本が譲歩したというのは、相手の主張の一部が通ったということでもある。日本には日本のフレームワークがあって、相手には相手のフレームワークがあるわけだが、日本が譲歩することによって、相手のフレームワークが勝ってしまうことはないではない。

 たとえ日本が軟化したとしても、ロシアと北朝鮮はそうとうに手ごわい相手だろう。ロシアと北朝鮮といったそうとうに手ごわい相手に軟化してうまく行くというのであれば、その他のさまざまなところにもまた軟化してみたらどうだろうか。いまの政権としては、ロシアと北朝鮮にたいして軟化することでうまく行くという思わくなのだろうから。

 いまの政権は、軟化するべきところにはそうせずに硬化して、軟化するべきではないところに軟化しようとしてはいないだろうか。軟化するべきところや、軟化してうまく行くところにたいしては、そうすればよい。そうするべきではないところには、そうしないようにするのが合理的だ。

 いまの政権は、変なところで不必要に硬化しているから、それによっておかしくなってしまい、別のところでまちがった軟化をしているように映る。軟化をするにしても、そうするべきことだったり、理が通っているのだったり、結果がともなうのだったりするのならよいが、そうではないのならのぞましくない。

 ロシアとのあいだの領土問題や、北朝鮮とのあいだの拉致問題について、それを何とかするという課題を定めるのはあってよいことだ。その課題を片づけるということで、どういうやり方をとるのかが大切だ。どういうやり方をするのかについて、複数の道すじをとって、それを国民に示して、より適切なものを選べるようにする。複数の道すじではなくて、一つの道すじしかなく、国民にくわしく道すじを示さないのなら、どう転ぶのかが不たしかだ。

 参照文献 『ブリッジマンの技術』鎌田浩毅 『最後に思わず YES と言わせる最強の交渉術 かけひきで絶対負けない実戦テクニック七二』橋下徹 『問題解決力』飯久保廣嗣(ひろつぐ)