いまの首相による政権が抱える危機と、危機がいつまでも片づかずにいまだにただよいつづけること

 いまの首相による政権が引きおこしたと見られる不正や失敗がある。それらの負のできごとの疑惑は、じっさいにあったのかどうなのかということでは、あるかないかの存在論で見られる。それとはちがい、かつてのものがいまにおいてただよっているということでは、憑在(ひょうざい)論で見られる。存在論と憑在論は、哲学者の篠原資明(もとあき)氏が言っていることだ。

 政権は、自分たちが抱える危機を、自分たちの手できちんと片づければ、かつてのものがいまにおいて憑在しづらい。片をつけられれば区切りがつく。そのいっぽうで、自分たちが抱える危機に向き合わず、対応しないで、危機から逃れつづけるのであれば、いまだに憑在することになる。危機は去らず、ただよいつづけるのだ。

 不正や失敗などの負のできごとがあるのにも関わらず、それをないとして押し通すのは、存在論で見れば無理やりにごまかすことができるところがあるかもしれないが、憑在論で見ればそれはできづらい。あるかないかではなく、いまとかつてとして見られるものだ。

 参照文献 『空海と日本思想』篠原資明 『危機を避けられない時代のクライシス・マネジメント』アイアン・ミトロフ 上野正安 大貫功雄訳