内閣法制局の長官は、民主的な正当性が長官よりもより高い野党の議員を批判するのはおかしいことだ(長官が言っていることの中身もおかしい)

 国会の場において、声を荒らげて発言するようなことまで含むとは考えていない。内閣法制局の長官は、野党の議員にたいしてこう言った。これを言ったあとにひと悶着がおきて、長官は前言を撤回することになった。不適切な発言だったのだ。

 議会は政権を監督することがいるが、そのさいに、野党の議員などが声を荒らげて発言することは含まれていない、と長官は言った。長官は、いまの政治における問題点や問題の所在をとらえられているとは言えそうにない。

 いまの政治において問題点となっているのは、声を荒らげはしないが、でたらめなことやいい加減なことや嘘を政権が言っていることにある。声を荒らげてはいなくても、いまの政権やいまの与党は、言うことややることにおかしいことが多くある。

 いまの政権やいまの与党のかかえるおかしさやでたらめについて、声を荒らげないとしたらそれはそれでおかしいことだと見なせないではない。声を荒らげざるをえないことが色々とある。そのもととなっているのが、いまの政権やいまの与党だ。

 たしかに、公の場においてふさわしい言い方というのはあるのはまちがいない。感情的になりすぎないことはいるものだろう。なるべく落ちつくように努めることはいる。

 言い方の適切さはあるとして、それとは別に、政権にたずさわる首相をはじめとした政治家や役人は、問いかけられたことにかみ合うようにできるだけ答えるべきだ。それが肝心なことなのにも関わらずほとんどできていない。このことが憲法に違反しているのだ。

 憲法では野党の議員が政権に質問して、政権はそれに答えることがいることになっていて、政権に応答させることを課しているという。憲法の六三条にはこうあるという。内閣総理大臣その他の国務大臣は、国会で、答弁または説明のため出席を求められたときは、出席しないとならない。議会が政権を監督するために、あえて政権を不利な立ち場(質問を受ける側)に置いているのだ。

 参照文献 『民主制の欠点 仲良く論争しよう』内野正幸 『憲法主義 条文には書かれていない本質』南野森(しげる) 内山奈月