首相の持ち出す逸話の疑わしさ

 自衛隊憲法に違反しているということで、自衛官の子どもが肩身のせまい思いをしている。首相はこれをある自衛官から聞いた話だとして、一つの逸話として語った。この話について、どこの誰から聞いた話なのかと野党の議員から問われた首相は、防衛省から聞いたと答えた。

 この話は事実なのか、と野党の議員がたずねると、首相は、私が嘘を言っているかのようにしているが、嘘を言うわけがない、というふうに答えている。野党の議員は、嘘とは一言も言っていないのに、首相は自分から嘘ということを持ち出して、敏感に反応している。まるで嘘ということが心の中で引っかかっていて、後ろめたさがあるかのようだ。

 首相を含めて政権の言うことは、仮説にとどまるものであって、最終の結論とまでは言えないものだ。自衛官の子どもが肩身のせまい思いをしているという話については、具体の証拠がないのだから、本当のことだと見なすわけには行きづらい。話をつくろうと思えばつくれるものだろう。自分でじかに自衛官から話を聞いたのならともかく、防衛省からのまた聞きということのようだから、話の信ぴょう性はそこまで高くはない。

 参照文献 『Think 疑え!』ガイ・P・ハリソン 松本剛史