悪いたくらみを持っているにちがいないといったような、動機論の忖度をできるだけとらないようにして、開かれたあり方をもってして、韓国と日本のあいだにあるもめごとを何とかすることができれば、建設的な方向に進むことが見こめる

 いまの韓国の大統領は、北朝鮮のことしか見ていない。南と北を統一することで歴史に名を残したいだけだ。日本と韓国が敵対しているくらいのほうが、韓国としてはやりやすいのだろう。いまの韓国の大統領がいるうちは、日本と韓国は仲よくなることは難しい。テレビ番組においてお笑い芸人の人はそう言っていた。

 韓国は北朝鮮と南北統一を目ざしているのはあるかもしれない。それについて、日本が他人ごとのように言うのはどうなのだろうか。歴史の文脈で言うと、韓国と北朝鮮が分かれたのは、日本にもその責任があるのはたしかだ。かつて日本は朝鮮半島を植民地にしていたのがある。戦争のときには、南の韓国には日本の大本営がいて、北朝鮮には関東軍がいた。その線がいまでも引きつづいている。

 日本が朝鮮半島を植民地として支配していたさいに、日本のやり方を朝鮮半島の人々にたいして押しつけた。同化政策をとった。日本語を使わせたり、日本の名前を名のらせたりした。

 日本が朝鮮半島を植民地として支配していたさいに、朝鮮半島の人々がもっていた自分たちの言葉や名前を使わせなくさせたのは、同一性(アイデンティティ)や存在理由(レーゾンデートル)の破壊である。日本人が、日本語や日本の名前を使えなくなって、韓国語や韓国の名前を使わせられるようなものだろう。

 韓国は日本と敵対しているぐらいがやりやすいというのは、韓国にたいする動機論の忖度だ。韓国が日本と敵対しようと思っているのかはわからないし、敵対しているのがよいと思っているのかもわからない。決めつけることはできないものだ。

 韓国と日本のあいだでぶつかり合いがおきているのについて、それを何とかするさいに、韓国の大統領がどういう人かというのはそこまで重みのあることではないだろう。

 いまの韓国の大統領は、日本にたいして、過去に謙虚になるべきだと言っているが、だからといって、日本とぶつかり合うのをよしとしているとは言えそうにない。むしろ、いまの韓国の大統領は、もの分かりのよい方だということもあるので、そうであるとすれば、韓国と日本とがぶつかり合うのを何とかするための好機とも見なせる。

 韓国の大統領がどういう人かということよりは、むしろ日本がやる気を持ってのぞむかどうかによるのがある。いまのところ、日本はさしたるやる気を持ってはいなくて、やる気を見せているとは言えそうにない。日本はそこまでのやる気を持ってはいないし、力を入れてとり組もうとはしていないのだから、韓国の大統領がどういう人であっても、たやすく片づくことではないだろう。

 韓国と日本とのあいだにぶつかり合いがあるのを何とかするためには、日本の報道機関などが、日本の政府や省庁の言っていることをただ垂れ流すだけなのではまずい。日本の政府や省庁が言っていることは、たんなる仮説であって、結論とは言いがたい。

 たとえ日本に都合が悪いことであっても、いまおきていることや、過去の歴史のことについて、謙虚になって、事実であるのならそこから顔をそむけずに向かい合うことができるのでないと、ものごとが何とかなることはのぞみづらい。韓国の大統領が、ちょっと日本に厳しいことを言ったくらいで、仲よくなるのは難しいとしてしまうのでは、韓国を悪玉化することで終わりになってしまう。

 韓国を悪玉化するのは、韓国に原因を当てはめることだが、そうではなくて、日本に原因を当てはめるのがいる。それが足りていないのは確かなことだろう。韓国にだけではなくて、日本にも原因を当てはめるようにして、たとえ日本にとって都合の悪い事実であっても、なるべくそれを認めるようにすることができれば、もめごとの解決の歩みを進めることができる。

 参照文献 『朝鮮語のすすめ 日本語からの視点』渡辺吉金容(きるよん) 鈴木孝夫