制度を通して外国から日本の社会にやってくる人を含めて、日本の社会にいる人にとられてほしい権利と義務

 いわゆる移民ではない。移民政策ではない。外国人材の活用や受け入れである。外国人技能実習制度において、与党である自由民主党の政権をになう首相はそう言っている。

 じっさいには移民である、外国からやって来る人たちにおいて、受け入れる日本の社会は、何をやってはならないのか。何をやることがいるのか。さまざまにある中で、権利については、制度を通して外国からやって来る人は消極の権利をもつ。そして受け入れる日本の社会は消極の義務を負う。

 消極の権利とは、他者から危害や加害を加えられないでいられるものだ。消極の義務とは、他者に加害や危害をおよぼしてはいけないものだ。物理として暴力を振るったり、精神の嫌がらせ(ハラスメント)をしたり、生活ができなくなるほど貧しい目にあわせたりするのは、消極の権利が損なわれている。それの侵害だ。そして受け入れるほうは、消極の義務を果たしていることにはならなくなる。

 制度を通して外国からやって来る人たちを日本の社会に受け入れるのであれば、消極の権利を侵害してはならないし、消極の義務を果たさなければならない。これは、外国からやって来る人に限らず、日本の社会にいるすべての人に当てはまるものだ。すべての人の消極の権利が守られて、消極の義務が果たされるのがのぞましい。そのためには、貧富の差や格差による不公平や不平等がなるべく小さくなることがいる。

 生活が苦しくなるほどの低い賃金しか払わないのや、長時間の労働をさせるのは、加害の行為をしていることになる。消極の権利を損なっているし、消極の義務を果たしていない。労働をしている中では、生活が送れて、衣食住を整えられるくらいの賃金をもらえることがいる。長時間の労働をさせられずにすんで、なるべく時間が短くてすむのならそれに越したことはない。労働(賃労働)とは経済権力に従わせられる隷属だからだ。そこに自由はない。

 積極の義務や権利というのは、他者にたいして貢献する(他者から貢献される)ことであるという。それをできるだけやれるようにする。消極の義務や権利はとりわけ重んじるようにして、それが損なわれたり果たされなかったりしないように気をつけたい。もし損なわれたり果たされなかったりしている(してきた)のであれば、あるべきではないことだ。できるだけ早急に改められることが必要だ。積極の改善の策をほどこすことがいる。放ったらかしのままにしないようにしたい。

 参照文献 『貧困の倫理学馬渕浩二