水道の民営化を進める中で、その中身や、それを担う政権にたいして、緊張(テンション)がおきていて、それが解かれていない

 水道を民営化する。与党はその法案を通そうとしている。野党はこれに反対している。水道を民営化すると水道料金が上がることが危ぶまれている。他国では、民営化したことで水道料金が上がって、市民からの反発がおきたことから、再び公営化した国はいくつもあるという。他国で水道の民営化に失敗した例は多い。

 水道の民営化をはじめに考案したとされるイギリスでは、改めてふり返ってみて、水道の民営化は失敗だったとしているという。

 いまの与党による政権は、水道の民営化をおし進めようとしているが、これには疑問をいだかざるをえない。なぜ政権は、水道の民営化において直接の行動にのり出そうとしているのか。というのも、直接の行動にのり出さなくても、すでに他国の失敗の例がいくつもあるのだから、その間接の情報を十分に見て行けば、わざわざ直接の行動にのり出さなくてもすむ。

 水道の民営化という直接の行動をとって、それでうまく行くこともまったくないではないかもしれない。成功することもありえないではないかもしれない。かりにうまく行かせようとするにしても、何をもってして成功だと見なすのだろうか。市場の成功となればよいが、市場の失敗がおきるとまずい。目的は何なのかや、そのための手段は何かというのがある。

 政権は、あくまでも水道の民営化という直接の行動をよしとしているということなのだろうか。それで法案を通そうとしている。そうであるのだとすれば、ごく限られた情報の中で意思決定をしている。せっかく他国の失敗の例がいくつもあるのだから、その間接の情報をとり入れて活用しながらやって行くのでないと、使える資源があるのにそれを使っていないことになる。

 意思決定をするさいには、政権が自分たちでおし進めようとすることに都合のよい声を偏ってとり入れやすい。これは確証の認知の歪みだ。この歪みがはたらいたままで意思決定をするのだと、誤った決定につながりやすい。せっかく他国の失敗の例という有用な資源があるのにも関わらず、それを使わないのであれば、よりよい意思決定にはなりづらい。間接の情報である有用な資源を無駄にせずに使ってもらいたいものだ。確証の認知の歪みを避けて、反証をするようにしたほうがよい。