憲法は国の理想を語るものだと首相の言うことにおける、上位と下位

 憲法は国の理想を語るものだ。首相はそう言っている。与党がおし進めようとしている憲法の改正における話し合いの中でのものである。

 首相が言っていることには一貫性が感じられない。いまの憲法は理想によっているから、現実とはかけ離れているので、改正しようというのが現実論だろう。その現実論に、理想論を持ち出すのであれば、つじつまが合いづらい。すでに理想は語られているのだから、とりたてて改正するのはいらないのではないか。

 憲法は国の理想を語るものだと首相は言うが、これそのものは頭からまちがったものではないかもしれない。素人の言うことだから合っているかはわからないものだが。

 首相の言うのとはちがい、こう言うことができるのではないか。憲法は国の理想を語るものというのではなく、自由を保障する基礎法だと見なせる。そこに本質があると見られる。

 首相が言うように、憲法が国の理想を語るものなのであれば、下位に落ちこんでしまうおそれがある。下位に落ちこむとは、自由が損なわれることを示す。国民から自由をうばう、国家主義の理想が語られることがある。

 下位に落ちこませないようにして、上位(メタ)に引き上げるようにする。与党がもくろんでいる憲法の改正と比べたら、いまの憲法はすでに上位(メタ)に引き上がっている。これを下位に引き下げようとするのは国民の自由が損なわれることになるので見かたによっては改悪になるだろう。

 首相を含めた権力をになう政治家が行なうことで気をつけないとならないのは、上位(メタ)にあるのを引き下げて落ちこませて、下位(ベタ)にすることで、国民がもつ自由を損なわせる動きだ。理想を語るのも大事なものではあるだろうが、下位(ベタ)に引き下げて落ちこませるものなのであれば個人としては反対だ。