韓国や中国の製品をつくる技術力が高くなっているので、日本はものを売るのに苦戦しているのだろう

 日本のテレビが売れないのは、技術力が落ちたからでなく慰安婦問題のせいだ。自由民主党の議員はそう言っているという。

 海外のホテルのテレビは、かつてはソニーパナソニックが多かった。それが慰安婦問題などの活動のためにサムスンや LG にとって代わったとしている。中国や韓国が、組織として慰安婦問題などの活動をして日本の評判を落としているからだとのことだ。

 議員は、日本のテレビが売れないのは(技術力が落ちたからではなく)慰安婦問題のせいだとしているが、日本のテレビが売れないことと、慰安婦問題とのあいだには、そうとうな飛躍がある。開きが大きくて間が空いているので結びつきづらい。

 日本のテレビが売れないことと、慰安婦問題とは、それぞれに単独の問題だととらえられる。慰安婦問題を単独として見てみると、それは韓国や中国が悪いのではなく、日本が悪いのだというのがある。慰安婦問題は日本が悪いのだから、日本のテレビが売れないのは日本が悪いことになる。

 日本のテレビが売れないという結果があるとして、それは慰安婦問題が原因なのだと言えるかは疑わしい。結果と原因の前に、この二つに相関関係(共変関係)があるとは見なしづらい。テレビが売れるかどうかと、慰安婦問題とは、相関しているものではないだろう。ほかのさまざまなことが複雑に関わっている。

 慰安婦問題というのは、テレビが売れないことの一つの答えになるものとは言いがたい。答えになりづらいのは、慰安婦問題とは何かということで、その観念(語句)をどこまでもさかのぼることができるのがある。色々な文脈を含みもつものであり、複数の文脈を見ないとならない。

 テレビが売れないという結果は一つの現象だろう。その現象の原因として慰安婦問題があるとするのは陰謀理論によっている。韓国や中国などの陰謀勢力が悪いとするものだ。これは原因を韓国や中国などの陰謀勢力に当てはめているものだが、そうではなくて、(テレビが売れない)原因を日本に当てはめられる。人(他国)のせいにするのがふさわしいことだとは見なしづらい。日本をとり巻く外の状況が原因だというのはできるが、それは慰安婦問題とはちがうことである。