外交における希望的観測

 ロシアのプーチン大統領は、日本のことをわかってくれている。日本の政府はそうした見かたをとっている。プーチン大統領は、ほんとうに日本のことをわかってくれているのだろうか。

 プーチン大統領は、日本のことをわかってくれていて、日本のために益になるようにしてくれるにちがいない。ここには、希望的観測がはたらいている。いまの首相の政権は、楽観論をとっているように見うけられる。

 もしほんとうにプーチン大統領が日本のことをわかってくれていて、日本にとって益になるようなことを多少なりともしてくれるのであれば、のぞましいことである。しかし、そうしてくれることのがい然性はそこまで高いものだとは見なしづらい。

 いまの日本の政権は希望的観測によっているようだが、これは先の戦争のときのことをほうふつとさせるものだと言えなくはない。先の戦争では、日本が勝つだろうとか、何とかなるだろうということで、戦争に踏みきって、その見こみとはまったく反対のことになってしまった。

 戦争で敗戦するほどのことではないが、ロシアとの領土についての外交で、日本の政府は希望的観測によって動いていることの危なさがある。うまく行かないことの危なさもあり、それとは別に、精神のあり方としての危なさもある。楽観論によってうまく行くのであればよいが、悲観論もあわせ持っていたほうがのぞましい。都合のよいように神風は吹かず、そんなに甘くはなかったということになるのを見こして、悲観論を持っていたほうがつり合いがとれる。