責任と実行の意味するもの

 首相を支持するようにうながす。支持しないとよくないことになるとおどす。首相の側近は、党の総裁選で、議員におどしの電話をかけていたという。この側近は、官房副長官を務める人物であると見られている。

 首相の側近から電話でおどされた議員は、首相を支持するのではなく、もう一人の候補者である石破茂氏を支持することを決めたという。首相ではなく石破氏を支持することに決めたのは、首相とそのとり巻きからの圧力をはねのけてのものだ。

 陰でこそこそと電話を使って人をおどすようなことをするのはよくないことである。おもて立ってできることをやるようにして、そうできないことはつつしんだほうがよい。首相の側近がしたことは、首相からじかに命じられたのかは定かではないが、そうではないにしても、おかしな忖度のはたらかせ方だ。

 首相が総裁選でかかげている責任と実行というのは、このことを言っているものなのだろうか。責任のある立場にいる者が、下の者を電話でおどすことを実行する。首相を支持してもらいたいのであれば、電話でおどすのではなく、ほかのもっとましな手を使うのであればよい。首相の側近は、何が適した手であるかの判断ができていないと言わざるをえない。

 まちがった責任と実行を行ない、ずるをしてまで勝とうとするのよりは、石破氏がかかげている正直と公正のほうがずっとよいものだ。正直と公正であれば負けたとしてもすがすがしい。正直と公正によってやり合うようにしてもらわないと、結果に正統性があるとは見なしづらい。