アルコール性健忘症でないことを証明するのは困難である(それであるおそれは、お互いに飲酒していたのなら、被害者だけでなく加害者にもまたありそうだ)

 お酒を飲んでから、そのごに性行為におよぶ。そうした流れにおいて、飲酒によるアルコール性健忘症になることがあるのだという。なので、お酒を飲む前に、もしくは飲んでいるさなかに、性行為をする約束をしていたのだとしても、それをあとで忘れてしまう。こうなってしまうとやっかいだ。

 お酒を飲んだあとに性犯罪の被害を受けた。そうしたうったえがあるとして、その人は、自分がアルコール性健忘症ではないことを証明することがいる。はたしてこうしたことが言えるのだろうか。この証明は、何かではないことを証すものであり、悪魔の証明となってしまうものだから、できかねるものだといえるだろう。無理な注文である。

 アルコール性健忘症になったことは、可能性としては否定はできないものといえる。なので、一つの可能性としてそれを言うのはあってもよい。しかしそれは、被害をうったえている人がその可能性(自分がアルコール健忘症である可能性)を自分で否定する責任を負うものとはいえそうにない。被害者は、自分がアルコール健忘症ではないことを立証する責任をとくには負っていない。あくまでも、一つの可能性としてそれがあると見なせるくらいのものである。

 イギリスの警察がつくった性行為のさいの注意をうながす動画では、性行為が紅茶に置き換えられて説明されている。それによると、お酒を飲んでいるのであれば性行為をすることやその約束をしてはならない(させてはならない)、となっている。きちんとした意識を保てないことがあり、あやふやになりやすいからだろう。こうした点について前もって注意がもてればよさそうだ。