この国と言うときのこのが、日本を指していないのであれば問題かもしれない(日本を指しているのなら問題はなさそうだ)

 この国を、守り抜く。これは今回の選挙で自由民主党がかかげているスローガンである。このスローガンの中で、この国との文句があるけど、これはかつて民主党がテレビのコマーシャルの中でも使っていたそうだ。

 民主党によるテレビコマーシャルで、この国との文句が使われていたさいに、それに批判を投げかけていたのが、自民党に属する佐藤正久議員である。佐藤氏は、民主党が日本をこの国とコマーシャルの中で言っているのは、民主党愛国心のなさのあらわれである、とツイートで述べていた。この国なんて言うのではなく、我が国と言わなければならない。それが愛国心をもった者たちのしかるべき言いあらわし方である。

 はたして、日本のことを、この国と言うのがよいのか、それとも我が国と言うのがよいのか、どちらなのだろうか。これは好みの問題もあるし、文脈とのかね合いもある。いずれにせよ、瑣末(トリビアル)なものであると言えそうだ。固有名詞で日本としてしまったほうがいちばん無難だ。

 日本のことを、あの国と言うのであれば、それはおかしい。あのと言うのは英語では That に当たり、遠称である。他人ごとみたいなふうになる。しかし、このであれば英語では This に当たるだろうから、近称であるため、それほどおかしくはない。ほんのちょっとだけ距離があるかもしれないが、それほどとがめ立てするほどのことではなさそうである。それが証拠に、自民党も今回の選挙ではスローガンの中でしっかりとこの国と言っているのがある。

 この国を守り抜く、はとくにおかしくはないけど、我が国を守り抜く、だとちょっと変な感じがする。これはなぜなんだろう。我が国を守り抜くだと、当たり前だからだろうか。我が国なのだから、われわれのうちの誰かが主となって守るのは当然であるとも言える。

 この国を守り抜くとのスローガンは、国とするのではなくて、国民とするのがよいのではないかという気がする。国ではなくて国民を守ったらよいのではないだろうか。なんで国民よりも国が先にきてしまうのかが腑に落ちない。国民のことは率先して守ってくれないのだろうか。そこがちょっと心配だ。あと、意気ごみはともかくとして、どう守り抜くのかや、たんなる思いこみではないのかが示されたほうがよさそうである。