選挙をやるにおいての首相の説明で、ちょっとよくわからない箇所がある

 民主主義の根幹である選挙が、北朝鮮の脅しで左右されることがあってはならない。そこで、あえてここで選挙を行なう必要がある。自由民主党安倍晋三首相は、国民へ向けてそのように述べていたようだ。この発言は、もしほんとうだとすると、正直いってちょっと意味がわからないものだなと感じた。

 はじめの文である、北朝鮮の脅しによって日本の選挙が左右されてはならない、はとりあえずよいとする。そのうえで、次の文がちょっと変である。なんで選挙をやる必要があるのだろう。あえて選挙をやる、のあえての意味がよくわからない。あえてとはいったい何なのだろうか。このあえての語は、どの角度からとらえたらよいものなのかがいまいち不明だ。

 北朝鮮の脅しによって日本の選挙が左右されてはならないのだとすれば、選挙をやらなければよいのではないか。前から予定されていたのならともかく、そうではなく選挙を急きょやるのだと、北朝鮮の脅しに左右されてしまうことになりそうだ。

 北朝鮮が日本へ向けて、選挙をやれだとか、やるなだとか言っている。もしかりにそうだとすれば、その言ってきていることへ批判の発言をすればよさそうだ。何も言ってきてはいないのに、北朝鮮を引き合いに出すのであれば、北朝鮮を利用していることになる。

 首相は国民へ向けて、国難突破解散だと言っている。この国難とは、北朝鮮がらみのことをさすものだと見なせる。これをふまえてみても、北朝鮮の脅しに左右されていると見ることができる。

 なぜ選挙をすることが、国難の突破につながるのだろう。選挙を行ない、もし自民党が与党の座を失い、ほかの政党がその座につく。そうなったとして、国難を突破することになるのだろうか。そうではなく、自民党が与党の座を保つにしても、そうであれば選挙の前とさして変わりがない。

 そもそも、日本の民主主義の根幹である選挙が北朝鮮の脅しに左右されてはいないことなど、証明するのはいりそうにない。とくに証明は不要である。それを証明するのは、首相が好んで用いるところの、悪魔の証明だといえそうだ。証明する相手が北朝鮮のような気もするし、そこもちょっと変である。