そもそも武装した難民がやって来るかもしれないようなことがないように努めればよいのでは

 武装した難民が日本に押し寄せてくるかもしれない。そうしたらどうするのか。警察なのか、防衛出動なのか、射殺なのか。自由民主党麻生太郎副総理は、北朝鮮からの難民が武装しているおそれを、講演のなかで述べている。それが報じられて、一部からの波紋を呼んでいる。

 もし難民が武装していたとすれば、それは国内の法律にのっとって、銃刀法違反か何かで取り締まればよいのではないか。武装している難民が、武器で攻撃してきたのだとすれば、これもまた国内の法律にのっとって対応すればすむ。治安警察活動の範囲内でおそらくできることだといえそうだ。

 武装した難民が引きおこすかもしれないこととして、テロ行為があげられる。もしそれを想定するのであれば、テロ行為にたいする対応をふまえればよい。万が一、国家の転覆みたいなのをはかっているのだとすれば、それをできるだけ防ぎ止めて、実行した犯人を国際的な裁きの場か、もしくは国内の裁きの場に引きわたす。

 講演のなかで麻生氏が述べている、警察か防衛出動か射殺か、といった対応の手だては、やや剣呑なきらいがあることもたしかだ。これがいったい何に由来しているのかといえば、最大の暴力組織として国家があることによりそうだ。武装した難民をかりに射殺するのだとして、それが暴力行為でないとはいえない。国家を後ろだてとしているからそれがおもて向きでかろうじて正当化されるにすぎない。

 麻生氏の講演のなかでの発言には、どことなく主権を中心とした発想が見てとれそうだ。国民の代表として主権をになう政治家が、いざというさいに法律をふみこえて、果敢な決断を下す。そうしたあり方を肯定するのだと、法律がないがしろにされかねない。いざというさいにも、できるかぎり法律にのっとった対応をするほうがのぞましいだろう。

 いまのうちから、できるだけ北朝鮮とアメリカとがぶつかり合わないように、さまざまな言動をとってゆく。もしぶつかり合ってしまうのだと、とばっちりがきて大変なことになりかねない。なので、はたからけしかけるなどもってのほかであり、力と力がせめぎ合うのをなるべく緩和すべきである。それにくわえて、朝鮮半島北朝鮮と韓国が引き裂かれてしまっているのは、日本にその責任が大いにあるのも否定しがたい。日本が朝鮮半島を植民地としていたさいに、北側を関東軍が、南側を大本営が、それぞれ三八度線を境にして占領していたという。