拉致被害の問題において、アメリカの力を借りるのも決して悪いわけではないだろうけど

 日本人が、北朝鮮によって拉致された。国際連合の演説において、アメリカのドナルド・トランプ大統領はそうしたことを述べた。日本が北朝鮮から受けた拉致被害に言及したのである。13歳の少女であった横田めぐみさんが拉致の被害を受けたことに演説のなかで触れた。

 ラジオで識者が語っていたところによると、これは日本とアメリカとのあいだで取り引きがあったためだと見られている。なぜトランプ大統領が日本の拉致被害について演説で触れたのかといえば、それは日本側からの要請があったためである。それをアメリカ側が受け入れたおそれが高い。

 アメリカ側が日本からの求めに応じる代わりに、日本はアメリカに全面的に従うようなふうにする。それで、日本の安倍晋三首相による国連の演説では、(北朝鮮への)圧力を強調する内容となり、アメリカの思わくを代弁するかのようなものとなっていたようである。

 アメリカのトランプ大統領が、演説のなかで日本の拉致被害に触れたのは、いささか唐突の感をまぬがれない。そのような感想が投げかけられている。たしかにそのように受けとれるものである。なぜそう感じるのかといえば、日本からの差し金が入ることで、トランプ大統領が日本の拉致被害に言及することになったためだろう。トランプ大統領は元商売人であり、とくに日本にくわしく通じているのでもなさそうだから、日本からの差し金によってはじめて拉致被害の具体的な情報を知ったと察せられる。

 トランプ大統領の口を借りるかたちで、日本の拉致被害に(演説の中で)触れてもらうことで、周知することができるのは大きい。それはあるのかもしれないが、これはとくにトランプ大統領の口を借りるのではなく、安倍首相の口から言うのでも不足はなかったのではないかという気もする。それとも、安倍首相の口から言うのでは不足があったのだろうか。その点はよくわからないけど、アメリカに追従するようにして、北朝鮮への圧力を強調するのだと、アメリカという大に事(つか)える事大主義となってしまっているのはいなめない。