遠回しの言い方

 国家の行政の担当者が、民間の人へ文面を送る。その文面のなかで、このような文言が使われていた。残念ながら、貴殿の要望や期待に沿うことはできない。しかし、こちら側としては、これからも引き続き見守ってゆきたい。何かあったら教えてほしい。

 この文言は、字面通りにも受けとることができるが、婉曲の語法としても受けとることができる。婉曲としてみると、関係の断りの意を示している。行政にこれから先、変な期待はもつな。行政はそちらを見守ることは基本としてしない。何かこちらに言ってくるのもやめてくれ。迷惑である。ちょっと極端だけど、お役所言葉とすれば、こうしたふうに読める。

 簡単に言ってしまうと、この文言はあいまいな表現になっているのはまちがいない。そのため、誤解が生じかねない。もっとはっきりと、関係をこれからも続けてゆきたいならその意思を示したほうが分かりやすい。そうではなく、関係をきっぱりと断ちたいのであれば、そのむねを相手に向けて明示的に記す。

 行政の担当者が民間の人へ送ったこの文言は、いっけんすると丁寧な言い回しなようでいて、かえって不親切なことになっていはしないだろうか。相手がどう解釈するのかにゆだねてしまっている。そこに甘えの心情を読みとってしまうのはうがちすぎになってしまうだろうか。こうしたどちらともとれるような文言に、行きすぎた忖度がはびこってしまう元凶の一つがあるような気がする。行政側は、こうした癖を改めたほうが、民間にとってみたら親切になるのではないか。