グループの終わり

 男性アイドルグループのスマップは、去年末をもって解散をした。伝え聞くところによると、メンバーのうちで木村拓哉氏はどちらかというとジャニーズ事務所寄りであるそうだ。他の 4人のメンバーは事務所からの独立をめざしていたともいう。そこで、メンバー同士のあいだに溝ができたともいわれている。

 残留派と目される木村拓哉氏は、ジャニーズ事務所にたいして温かい義理をもっていると見なせる。いっぽう他の 4人のメンバーは、事務所にたいして冷たい義理をいだいているということになるのかな。憶測だから見当ちがいのおそれがあるのはたしかである。そのうえで、どちらかの側が正しいといったものではなく、どちらにも理があり、それなりの言い分があると見ることができそうだ。

 和をもって貴しとなす、といったありかたがあるけど、やむなく和を乱してしまうこともある。どこかに肩入れして協力すれば、別のどこかがないがしろになる。そういう矛盾がおきてしまうわけである。世間のなかで波風を立てずにうまく立ちまわるのはときにむずかしい。

 芸能界では、ビートたけし氏とタモリ氏がともにスマップ解散に言及していて、その発言が対照をなしていたような気がする。たけし氏は、おそらく推測するところによると、あまり男性アイドルグループが好きではないようで、わりと突き放したことを述べていた。解散した後は、個人の力量がより試される。とんとん拍子でうまくやってゆけるほど芸能界は甘くはない。もし資質がうまく活かせれば成功もつかめるだろう。そうしたような、大局に立った即物的(客観的)なことを言っている。

 いっぽうタモリ氏はスマップとの距離が近いせいか、温かい言葉を投げかけている。裏での、芸能活動にたいする姿勢について、その頑張りとかひたむきさなんかをたたえているといえそうだ。人生に勝ち負けなどなく、そうした違いにこだわらなくてもよい。ごたごたがあっても引きずらず、やったことはすぐに忘れてしまうのがよいのだとしている。これは現実に役立つような、前向きな助言であると感じた。

 偏執症(モノマニア)として、エリートになるべく、立身出世の道をとるのも有意義でよい。いっぽうそうではなくて、分裂症(スキゾフレニー)といったらいい方は悪いが、あまり世間の勝ち負けの通念にのらないあり方もありだろう。タモリ氏の助言には、よい意味で分裂的なところがかいま見られそうだ。意味についてのこだわりを相対化する。

 やる気のある者は去れ、などとも言っている。ふつうだったら、やる気のある者がプラスに見なされ、やる気のない者はうとんじられ、見下されがちだ。しかし、やる気のある者ばかりだと、暑苦しくなりがちだし、我がぶつかり合う。欲望が欲望を生む。そうしたものごとの中心ばかり見るのではなく、周縁のほうに目をやると、意外とおもしろいことがあったりするという。逆説もまたときには大事なのである。

 別離は出発の始めである。R.M.リルケの言ったことだそうだ。それぞれが持ついろいろな可能性のようなものが、今まで多少なりとも抑圧されていたおそれはあるから、それが解き放たれるとすれば、幅が広がり、楽になれるところもあるだろうし、よい面もあるのかも。